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「ある正の実数に対して正の平方根はただ一つに決まる」の証明 ~集合の応用~

最近「解析入門」って本を読み始めてまして、その中に面白い証明があったんでメモしときます。ただし、僕は数学科の人間ではないので、この記事の解釈が間違ってる可能性も十二分にあることをご承知の上で読み進めてください。

その証明ってのは、「任意の実数a > 0 に対し、実数 b > 0 で、\( b^2 = a \)となるものがただ一つ存在する」って命題の証明です。この命題は、\( b^2 = a \)が成り立ってて、\( b \)も\( a \)も正の実数なら\( b \)も\( a \)も複数の数値を表すことは絶対にあり得ないよーってことを言ってるんですな。

要するに、この命題は「ある一つの実数があった場合、その正の平方根はただ一つに決まるよー」ってことを言ってるんですな。

パッと聞くと、そんなの証明できるの?って感じですが(僕はそうでした)、上で紹介した本では集合を利用して証明しておりました。その証明の中で、所々「これはいったいどう解釈したらいいんだろう?」みたいなことがあったので、証明と共にそのメモも書いときます。「ここ間違ってるよー」みたいなのがあれば是非ご指摘ください。

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考え方

数学に不慣れな方でも、この項目を頭に入れた上で続きの項目を読んで頂ければ理解がしやすいのではないかと思います。証明全体の考え方はこんな感じです。

  2019/07/09 以下追記

最終的にやりたいことは、「任意の実数a > 0 に対し、実数 b > 0 で、\( b^2 = a \)となるものがただ一つ存在する」を証明することです。つまり、\( b^2 = a \)となる\( b \)がただ一つに決まることを証明したいわけです。具体的には後半記事に書きますが、\( b^2 \neq a \)が成り立っているとただ一つには決まらなくなっちゃうんです。

ってことで、まずは\( b^2 \neq a \)が成り立つのかどうかを確認するところから初めていくことになります。

  2019/0709 追記ここまで

「もし、\( b^2 \neq a \) が成り立つとおかしいことになっちゃうのではないか」ってのが根本の考え方で、その「おかしいこと」ってのは集合を考えてやれば起きるんじゃないかっていう風に考えを進めて証明していくことになります。言ってみれば、集合を利用した背理法ですな。なので、そもそもの考え方は哲学で言うところの問答法、統計で言うところの検定と同じです。

経験的に考えてみれば、\( b^2 = a \)ってのがただ一つに決まるってのは極めて当然のことのように思えます(正の実数だけで考えている限り、\( 2^2=4 \)みたいに、bもaもただ一つの数値に決まりますんで)。

つまり、少なくとも今まではその命題を証明せずとも問題が無く、それを前提として計算したり証明したりしていたわけです。裏を返せば、\( b^2 = a \)が複数の値を持ってたら問題があるかもしれないわけです。言い換えると、もしも\( b^2 \neq a \)が成り立ってしまうと問題があるかもしれないわけです。(※ここで問題を読み替えたわけですな。「\( b^2 = a \)となるものがただ一つ存在する」から「\( b^2 \neq a \)が成り立つと矛盾が生じる」っていう風に)

っていう風に考えてやると、\( b^2 \neq a \) が成り立つとおかしいことになるだろうと考えて、背理法で証明していこうってのは自然な流れかと思います。で、その上で集合を考えて矛盾を導こうと。

集合を利用するってのも、集合はその要素によって定義されるものって考えてやると、なんとなくここで出てくるのも納得な気がします。数直線を思い浮かべてもらって、数直線上のある区間をAっていう風に一つの集合と考えてやります。そうすると、直観的にbとaが一つに決まらなかったら、要素が一つに決まらないとか、境界がはっきりとしないみたいな問題が起こってきそうですもんね。

集合を定義する

上の考え方を実際に実現していくわけですが、まずは「\( b^2 \neq a \)が成り立つと矛盾が生じ」そうな集合を考え出さないといけません。なので、そんな集合を考えてみると、0以上の実数で、かつ二乗した値がa以下となるような集合が挙げられます。そんな集合をAとおきます。数式で書くとこんな感じです。

$$ A = \{ x \in \mathbb{R} \mid x \ge 0 , x^2 \le a \} $$

例えば、a=4だった場合は、Aには0以上2以下の実数が含まれます。a=9だとすると、Aは0以上3以下の実数の集合になります。

証明は\( b^2 \neq a \)が成り立ってしまうと、ここで定義した集合Aの境界を定義するときに矛盾が生じるので、\( b^2 = a \)しか成り立たないっていう風に進んでいきます。

「境界」って言葉が出てきましたけど、数直線を想像してもらえばなんとなくのイメージがつかめるかと思います。ただ、なんとなくのイメージだけでは進めないのが数学の常でして(数学科の人間が言うのもおこがましいですが)、もっと厳密に定義された概念から証明を進めていくことになります。その「もっと厳密に定義された概念」として、上界と上限って概念を利用することになります。

上界ってのはざっくりと言うと、ある集合の要素以上の数の集合のことです。上限は上界の中で一番小さい数のことです。例えば、今回考えようとしてる集合Aだったら、a=4だった場合、集合Aの上界は{2, 3, 4, ・・・}になって、上限は2になります。上限はsupAと表します。

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Aの上限は必ず存在するか?

上限と上界って概念を軽く説明したところで、じゃあAには絶対に上界と上限があるの?ってことを確認しときます。そもそも上界が存在しなければ上限が定義できないので、まずは上界から。

仮にaが1未満だった場合、上限かどうかは分かりませんが、1は少なくとも上界の要素になります。同じように、aが1以上だった場合はaが上界の要素になります。なので、Aにはかならず上界が存在することになります。aが1未満の場合と1以上の場合とに分けて考えたのは、Aの要素が1未満の場合と1以上の(正確には1よりも大きい)場合とでxとaの大小関係が変わるからです。

例えば、a=0.09だった場合、Aは0以上0.3未満の集合になります。この場合、aは上界の要素にはなりませんけど、1は上界の要素になります。aが1以上の場合はa=4の場合について考えたときのことを思い返していただければ、aが1以上のときはaが上界の要素になるってことは理解していただけるかと思います。

Aには必ず上界があると保証できたところで、次に上限があることを保証します。こちらは連続の公理から保証できます。連続の公理ってのは、実数の性質を決める一つの約束事みたいな命題で、「実数の部分集合Aに上界が存在すれば、実数の中に必ずAの上限も存在する」って約束事になります。

もっと平たく言うと、もしも何かしらの集合に上界(集合のどの要素よりも大きい数)があれば、必ず上限(集合のすべての要素よりも大きい数の中で、最も小さい数)もあるよーってことですな。

ってことで、Aには上界も上限もあるってことが分かりました。

境界に注目する

上の項目でAに上限という、言わば境界が必ず存在することが分かりました。そこで、bをAの上限と定義します(\( b = \sup A \)とする)。\( b^2 \neq a \)が成り立つと境界に矛盾が生じるっていう風に進んでいきたいところなんですけど、その前に場合分けをします。\( b^2 < a \)って場合と\( b^2 > a \)の場合っていう2パターンです。

もしも\( b^2 < a \)が成り立つと、どんなおかしいことが起きるかを見てやります。

仮に、\( \varepsilon \)っていう変数を考えてやります。この変数は\( b \)と\( \frac{ a-b^2 } { 3b } \)とを比較したときに、小さい方を取るっていう変数と定義してやります。xとyの内、小さい方を取るってのを関数として\( \min\{ x, y \} \)と定義してやると、\( \varepsilon \)は次のように表せます。

$$ \varepsilon = \min\{ x, y \} $$

そう定義しておくと、\( \varepsilon \)は必ず0よりも大きい数値になります。ここで1つ思い出していただきたいのですが、Aの要素は0以上でaの平方根以下の実数という定義でした。ということで、\( (b + \varepsilon )^2 \)って数値を考えてやって、こいつがAの要素になるかならないかを確認してやります。要するに、\( (b + \varepsilon )^2 \le a \)なのか\( (b + \varepsilon )^2 > a \)なのかを見てやるわけですな。

bはAの上限と定義してるわけですから、もしも\( b^2 < a \)が成り立つのなら、\( b^2 < a \)という関係式があっても、bよりも大きく、aよりも小さい数というのは存在しないはずです。というわけで、\( (b + \varepsilon )^2 \)がa以下になるのかならないのかを確認してやるわけです。で、その確認のための計算が下の計算になります。

数式の下に数式の説明を書いていますので、その説明を読みながら式変形を追いかけたら多少は理解しやすいかと思います。

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$$
\begin{equation}
\begin{split}
\ (b + \varepsilon )^2 &= b^2 + 2 b \varepsilon + \varepsilon^2 \hspace{75pt} (1) \\
&\le b^2 + 2 b \varepsilon + b \varepsilon = b^2 + 3 b \varepsilon \hspace{28pt} (2) \\
&\le b^2 + 3 b \frac { a-b^2 } { 3b } = b^2 + (a – b^2) = a \hspace{7pt}(3) \\
\end{split}
\end{equation}
$$

まず最初の変形は2乗の展開公式を利用しただけなんで、簡単に理解していただけるかと思います。次の\( \le \)での変形((1)から(2)への変形)ですが、ここでは新しく\( b^2 + 2 b \varepsilon + b \varepsilon \)って数式と比較しています。

\( \min\{ x, y \} \)ってのはxとyを比較して、小さい方を取るという関数でした。なので、\( b < \frac{ a-b^2 } { 3b } \)だった場合、\( \varepsilon = b \)となって、(1)と(2)の間には等号が成り立つことになります。もしも、\( b > \frac{ a-b^2 } { 3b } \)だった場合、\( \varepsilon = \frac{ a-b^2 } { 3b } \)となります。このとき、\( \varepsilon \)はbよりも小さいので、(1)と(2)の間には不等号<が成り立つことになります。というわけで、=と<を同時に表すと(1)から(2)のように変形できます。

次に、(2)から(3)への変形です。こちらは、(1)に\( \varepsilon = b \)という条件が加わった状態の式であるという風に見ることができます。つまり、\( b \le \frac{ a-b^2 } { 3b } \)だった場合の(1)式と見ることができます。もしも\( b = \frac{ a-b^2 } { 3b } \)であれば、\( \varepsilon \)がどちらをとっても議論は破綻しないので、\( \varepsilon = \frac{ a-b^2 } { 3b } \)と考えても差し支えありません。そのように考えると、(2)と(3)の間には不等号\( \le \)が成り立ちます。ということで、上の不等式が成り立つことになります。

なので、\( (b + \varepsilon )^2 \)はa以下になります。つまり、\( b + \varepsilon \)はAの要素の一つということになります。しかし、上の方でも書いた通り、bはAの上限、つまりは、Aの中にはbよりも大きい数が存在しないという約束があるにもかかわらず、Aの中にはbよりも大きい数が存在することになってしまいました。

\( b^2 < a \)以外の前提は定義であったり、実数を扱うときの約束事だったりであるので、間違いようがないわけです。というか、間違ってるとか合ってるとかの判定がそもそも不可能な命題になります。

というわけで、論理が破綻してしまったのは、こちらから勝手に決めた\( b^2 < a \)が成り立つという条件のせいだということになります。つまり、\( b^2 < a \)は成り立たないということになります。

残るは\( b^2 > a \)の場合です。

と、進めていきたいところなのですが、細かな説明もしてたら想像以上に長くなってしまったので、続きはまた次回。

 

P.S.
証明というと、何か等式があって、上手いこと式変形をしていって左辺と右辺が同じになるっていう証明しかしてこなかったので、集合みたいにまったく別の概念に思ってたものを利用して証明していくってのが面白かったなぁ。それと、不等号で証明を進めていって、どちらか片方が小さいときは・・・って考えるのもなかなか新鮮で面白かったですね~。ただ、申し訳ないことに、合ってるかどうかは分かんないんですが。

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