さてさて、長らく続いてるPSYCHO-PASS3の評価分析第3弾です。第1弾と第2弾は下のリンクからどうぞ。
今までの経過をざっくりと説明しておきますと、
まずは第1弾で作品をまだ見ていない視聴者の方々にお勧めするために分析することに決めました。そして、悪評の原因から、どんな人になら損はしないと言えるのかを考察しようって方針でやっていくことにしました。テキストデータの前処理もこの第1弾で済ませています。
次に、第2弾では評価ごとの特徴語を見ることで、大体どのような単語に注目すればいいのかを探りました。具体的には、特徴語抽出からは次のような仮説が得られました。
仮説1:そもそもの脚本が不満だった
仮説2:キャラやキャラたちの設定が不満だった
仮説3:劇場に続くという形式が不満だった
そして、対応分析で、さらに色々な着眼点が考えられることが分かりました。
今回の第3弾では、どこに焦点を合わせて分析していけば効率的なのかを考察していきます。
焦点を絞る
具体的には何をするかを説明していきます。
この記事でやることは、前回の終わりの方に名前だけ出した”共起ネットワーク”を使って新たに仮説を作ることです。
共起ネットワークについてはまた後で説明しますが、それまではとりあえず単語同士の関係性が分かるものと考えておいてください。
例えば、「リンゴ」という単語と「林檎」という単語が同じ意味であるとか、「焦点」と「合わせる」が一緒に使われるとかいうことがあれば、”何らかの関係性がある”ということが、共起ネットワークから読み取れるようになっています。
前回記事の対応分析では色々な単語が出てきましたが、その単語同士の関係性を調べていきます。関係性が分かれば、どんな文があるのかが予想できるかもしれないので、その予想から、どんな表現があったのかが予想しやすくなるかもしれません。
そこまで予想出来たら、最終的に「どんな部分がダメだったから、評価が良くなかった。なぜなら、こういう表現が見られたからだ」という感じのことが言えるかもしれません。
というわけで、今回は前回の結果を踏まえながら、共起ネットワークを使ってどんな文(や表現)がありそうなのか、さらに焦点を絞った仮説を立てていきます。
共起ネットワーク
共起ネットワークは、一緒に使われる頻度の高い単語同士を線で結び付けた図のことになります。この図を見ることで、単語同士の関係性や単語の役割を予想することが出来ます。
ただし、”一緒に使われている”と判断する基準をどう設けるかによって結果が変わってきます。今回はその基準を”同じセル内(同じレビュー内)”と”同じ文内”との2つで分析しました(KH Coderでは他にも”同じ段落内であれば一緒に使われたと判断する”という設定を使えますが、今回は使いませんでした)。
つまり、同じ文内では使われていなくても”同じセル内(同じレビュー内)”で一緒に使われていれば一緒に使われたと判断するという設定と、同じセル内で使われていても”同じ文内”で一緒に使われていなければ一緒に使われたと判断しないという設定の2つを利用したということですな。
次の図1が共起ネットワークになります。中央の線で右側と左側とに分けられていると考えてください。
ここで、H5単位と書かれている側が、1つのレビュー内で一緒に使われていた単語を、文単位と書かれている側が、1つの文内で一緒に使われていた単語同士を線で結んでいます。つまり、線の左側は個人単位でのレビューを分析した結果で、線の右側は各文ごとにレビューを分析した結果だということですな。
なので、H5単位と書かれている側からは、あるテーマに触れている人が他にどんなテーマにも触れている傾向があるのかを読み取れて、文単位と書かれている側からは、あるテーマについてどんな表現をしているのかを読み取れると考えることが出来ます。左からはテーマを、右からは表現をって感じですな。
線の濃さが濃いもの同士は、一緒に使われたり、同じような内容を表していたりといった感じで、他の単語よりも比較的結びつきが強いということを示していると思っておいてください。例えば、右側の図にある「能力」という単語は、「灼(あらた)」や「主人公」「メンタルトレース」「メンタリスト」という単語との結びつきが強いということが分かります。
例えば、「灼」というのは「主人公」の名前ですし、「メンタリスト」というのは「灼」の設定です。「メンタルトレース」は「灼」の持っている能力の名前です。このように、結びつきが比較的強いもの同士が線で結ばれています。
なので例えば、H5単位での共起ネットワークの「能力」という単語であれば「主人公」や「メンタルトレース」という単語と同じグループに括られるということが分かります。そこからAmazonレビューを残した人の中には「主人公である灼のメンタルトレースという能力」についてAmazonレビューにコメントを書きたくなった人が一定数は居るのではないかなどの予想ができます。
色はより関連性のある単語同士をグループ化したものです。機械的な処理なので、本当に関連性があるのかどうかは確かめないといけませんが、ここから、テーマを見出すことが出来ます。ただし、図の左側の色と右側の色同じテーマを表しているとは限らないので注意が必要です。
こんな感じで仮説を立てていきます。というのが次の節です。
共起ネットワークから考えられること
共起ネットワークには、同じ一つのレビュー内で使われていたら”一緒に使われている”と判断するH5単位の共起ネットワークと、同じ文内で使われていたら”一緒に使われている”と判断する文単位の共起ネットワークという2つがあるので、それぞれに分けて考察を進めていきます。
まずは、右側にある文単位の共起ネットワークからです。
文単位(右側の共起ネットワーク)
今回注目したのは右側では主には4か所あります。その4か所は、
- 中の方にある橙色のグループ
- PSYCHO-PASS特有の単語と新設定が線で結ばれていたり、同じグループにあったりする
- 「キャラ」という単語と「魅力」という単語が線で結ばれている
- ぱっと見ではあるけど、キャラに関することと、PSYCHO-PASS特有の単語が多い
です。ここから仮説として、
- テレビ版だけで終わらせずに劇場に続かせることが気に食わない
- PSYCHO-PASSの世界観を構成している要素について言いたいことがある
- 登場人物の魅力について言いたいことがある
などが不評の原因だったのではないかと考えられます。※数字の順番に特に意味はありません。
2番の「世界観を構成している要素に言いたいことがある」に関しては、PSYCHO-PASSがテレビで第3期まで作られる(視聴者に前提条件を認めさせられている)ことから、世界設定そのものに苦言を呈しているということではないと考えられます。
つまり、世界設定自体に問題があるということではなく、今までの世界設定と矛盾する点(もしくは不可解に思える点)があったために、PSYCHO-PASSの世界観を構成する要素に言及しているのではないかと考えられます(レビューを実際に読んでみると今までの世界設定と矛盾するのではないか?というような感想が大半でした)。
次は左側にある各レビュー(個々人)単位の共起ネットワークから考察してみます。
レビュー単位(左側の共起ネットワーク)
同じレビュー内で一緒に使われている単語同士の結びつきを描いてるので、右側よりも一般的な言葉、特に感想を表す言葉が多くなっていることが分かります(同じレビュー内の場合、”一緒に使われる”と判定する範囲が広いので、「見る」とか「思う」みたいな一般的な単語の方が表れやすくなる)。
ですが、面白そうな考察が得られそうな部分があります。注目する点は、水色(右下)のグループです。先ほどの文単位の共起ネットワークでは結びつきがないと判定されていた「メンタルトレース」や「主人公」「能力」が、「サイコパス」や「世界」「作品」といった単語のグループと同じグループに入れられています。
ちなみに、ここで抽出されている「サイコパス」という単語には「PSYCHO-PASS」という語も含まれます。というのも、すべての「PSYCHO-PASS」という語は「サイコパス」に置き換えていますので(Part1の中ほどをご参照くださいませ~)。
このことから、次の予想ができます。
「主人公の能力であるメンタルトレース」と「PSYCHO-PASSという作品の世界」の両方について言いたいことがある人が存在するのではないか?(例えば、「こういう世界だ。そんな世界にメンタルトレースは合わない。」とか「世界観はこうだ。だから、メンタルトレースは見どころのある設定だ。」みたいな感じで)
と、いうわけで前までよりも単語の役割がより詳細につかめるようになったと思います。今回の共起ネットワーク、前回の特徴語と対応分析を利用して、次回はさらに仮説を詳細にしていきますので、お楽しみに~。
P.S.
文単位の共起ネットワークに、「ストーリー」「展開」「今後」「期待」って部分があるけど(「キャラ」とか「魅力」とかの含まれる黄色のグループ)、やっぱり高評価の原因って、「今後のストーリー展開に期待したい」みたいなことなのかな?
※注意
この記事に書いている分析や分析結果は一例であって、その内容の真偽を保証する物ではありません。あくまでAmazonレビューをテキストマイニングした結果から考察したものですので、実際とはかけ離れている可能性がありますので、ご注意ください。
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